クリスティアン・ブルンメンフェルト — 2020年東京オリンピックトライアスロン男子個人金メダリスト

カラダの深部温度を管理して
暑熱順化&パフォーマンスUP!

世界最強トライアスリートが装備する「CORE」の登場により注目を集めている新たな指標、「カラダの深部温度」。
暑さに強くなるだけでなく、パフォーマンスUPも期待できる「暑熱順化トレーニング」とは?

感覚的な暑さ対策から
根拠のある暑熱順化へ

暑い日に運動するとパフォーマンスが落ちる、無理をすると熱中症になりかねないといったことは、アスリートなら誰でも身をもって知っている。

しかし、運動強度を測るための心拍のような、確たる指標があるわけではないので、ただ漠然と暑い日に練習して暑さに身体を慣らすことになる。

その効果についても、「暑くても割と快適に走れるようになった」とか「本番で割と最後までバテなかった」といった感覚的な判断に頼らざるを得ない。

ナショナルチームで練習するトップアスリートの場合、小さなピル状の温度センサーを呑んだり、センサーを直腸に入れたりして、深部体温をモニタリングしながらトレーニングする選手もいるが、一般のアスリートがそこまでやるのは不可能に近い。しかし、「CORE」は、心拍計のそれに近いセンサーを付けるだけで、リアルタイムで深部温度(測定値)をモニタリングできる。

心拍計やパワーメーターがなかった時代は、運動強度も呼吸とかキツさといった感覚を目安にトレーニングしていた。
暑熱順化についても同じで、これまで感覚に頼って暑い中で漠然と練習していたのが、身体の深部温度を測ることで、どの体温レベルでトレーニングするかという指標ができるわけだ。

なぜ、暑いとパフォーマンスが落ちるのか?
「暑熱順化」のメカニズム

そもそも人の身体は体温が上がると、パフォーマンスが落ちるようにできている。

なぜなら恒温動物である人間は、優れた体温調整機能をもっており、暑熱環境下では深部温度を保とうとする働きにより、熱放散(冷却)のほうに 血流を優先的に使ってしまうからだ。このとき血管系の協調作用(血管の拡張など)がうまく機能せず、筋肉への酸素供給が不足してしまいパフォーマンスにも影響が出てしまうのだ。しかし、暑熱順化トレーニングをしていくと血管系の協調作用が向上することで血流のバランスをうまく保てるようになり、 暑い中でもパフォーマンスの落ち込みが少なくなる。これが暑熱順化だ。

もちろん個人差はあるが、一般的には暑熱順化トレーニングを始めて2週間後くらいから、順化が始まるとされている。

暑さに強くなるだけでなく、パフォーマンス自体も向上する

この暑熱順化のメカニズムをもう少し生理学的に見てみると、まず人間の身体は熱ストレスを感じると、血中の血しょうを増やす。これにより血中成分のバランスが崩れる。この乱れを整える ためにヘモグロビンを生成する。このメカニズムが結果的に「暑さ慣れ」だけじゃない、暑熱順化トレーニングのもうひとつのメリットを生み出す。酸素を運搬する血中のヘモグロビンが増えるので、ただ暑さに強くなるだけでなく、パフォーマンス自体も向上する。つまり暑熱順化トレーニングはパフォーマンスをアップさせるトレーニングでもあるわけだ。

ヘモグロビンを増やすトレーニングでよく知られているのは、低酸素状態で行う高地トレーニングや低酸素室トレーニングがある。しかし、その環境を整える必要があり、どのくらいの高度(酸素濃度)でどんな練習を行うかなどは、アスリートによって個人差も あり、見極めや設定がやや難しい。その点、暑熱順化トレーニングは、自分に合った温度領域をテストで把握し、これを基に行うことができる。高地や低酸素室に行かなくても、日常的な環境で行うことができるというメリットもある。